教育費負担があるから、会社を辞められない?
退職金という「もう一つの資金」を考えてみる
子どもの教育資金について調べていると、少し気が重くなることがあります。
進路によっては、子ども一人あたり数百万円、あるいは1,000万円を超える教育費が必要になることもあります。
教育費が実際にどのくらいになるのかは、進路によって大きく変わります。
教育資金について、進路別に具体的な金額をシミュレーションした記事もあります。
子どもが2人、3人となれば、その金額はさらに大きくなります。
そうすると、こんなことを考えてしまうかもしれません。
「こんなに教育資金が必要なら、会社を辞めるなんて簡単にはできないな」
そう思ってしまいがちです。
確かに、これから何年にもわたって、まとまった支出が続きます。
でも、ここで一つ、逆方向から考えてみたいと思います。
会社を辞めることで得られるお金もあるのではないでしょうか。
その代表的なものが、退職金です。
教育資金は、時間とともに減っていく
教育資金には、一つ特徴があります。
支払うたびに、残りの必要額が減っていくことです。
例えば、大学までの教育資金として2,000万円を準備するとします。
最初は2,000万円必要だったとしても、小学校で100万円、中学校で100万円、高校で150万円……と支払っていけば、その後に必要な金額は少しずつ減っていきます。
もちろん、実際の教育費は進路によって変わりますし、毎年きれいに減っていくわけではありません。
大学入学時など、大きな支出が集中する時期もあります。
それでも、大きな流れとしては、
教育資金は、時間の経過とともに「これから必要な総額」が減っていくお金
です。
これは、資産形成を考えるうえで結構重要なポイントだと思います。
一方、退職金は増えていくことがある
これと少し対照的なのが退職金です。
退職金制度は会社によって大きく異なりますが、勤続年数や職位、ポイントなどをもとに退職金額が決まる制度では、
勤続することで将来の退職金が増えていく
場合があります。
つまり、
教育資金
→ 時間とともに、必要な残額が減っていく
退職金
→ 時間とともに、受取額が増えていく場合がある
という、少し面白い関係になります。
もちろん、すべての会社の退職金制度がこの形とは限りません。
退職金がない会社もありますし、勤続年数だけで単純に増えるとは限りません。
だからこそ、自分の会社の制度を確認することが大切です。
「辞める」と「教育資金」を別々に考えない
会社を辞めるかどうかを考えるとき、
「辞めたら給与がなくなる」
ということに目が向きます。
これは当然です。
特に子どもの教育費がこれから増えていく家庭では、将来の収入がなくなることは大きな問題です。
ただ、退職するときには、
給与がなくなるだけではありません。
退職金というまとまった資金を受け取る可能性があります。
もちろん、その退職金を教育費に使う必要があるとは限りません。
老後資金にすることもできます。
住宅ローンの返済に充てることもできます。
生活防衛資金として残すこともできます。
それでも、
「会社を辞める=収入を失う」だけではなく、「退職によって受け取る資金もある」
という視点は、持っておいてもいいのではないでしょうか。
そして、ここまで考えてみると、もう一歩先の選択肢も見えてきます。
例えば、将来受け取る退職金まで含めて計算した結果、教育資金がすでに十分に手当てできているのであれば、その後の給与を「教育資金を賄える水準を前提」として考える必要はなくなるかもしれません。
そうであれば、今の仕事を続けることだけが選択肢ではありません。
収入水準は少し下がっても、働き方や時間に余裕のある仕事へ移る。
あるいは、これまでとは違う仕事を探してみる。
「教育資金を準備するために、今の仕事を続けなければならない」という前提そのものを見直せる可能性があります。
逆に、退職金を加味しても、教育資金がまだ不足するのであれば、
「あといくら足りないのか」
「何歳までに、その不足を埋めたいのか」
を考えてみる。
そして、その目標から逆算して、
「この程度の給与水準の仕事ならよいのではないか」
と、選択肢の幅を広げられるかもしれません。
もしくは、逆に不足が明確になった際に、
「何年でこの不足を埋められるような給与水準への転職を目指そう、あるいは、今の会社であと何年か頑張って、昇給や昇格を目指そう」
といった選択肢を考えることにつながるかもしれません。
つまり、退職金を調べるというのは、単に「退職したらいくらもらえるのか」を知るだけではありません。
これから、どのように働くのかを考えるための材料にもなるのです。
教育費が残っているから、絶対に辞められない?
ここで大事なのは、
「教育費があるから辞めてはいけない」
でも、
「退職金があるから辞めても大丈夫」
でもありません。
そうではなく、
退職する時期によって、教育資金と退職金の両方がどう変化するのか
を考えてみることです。
例えば、
「今辞めた場合」
「3年後に辞めた場合」
「5年後に辞めた場合」
で、それぞれ、
- その時点で残っている教育費
- それまでに積み立てられる金額
- その時点で受け取れる退職金
- 退職後の生活費
- 住宅ローンなどの残債
を並べてみる。
すると、「辞められるか、辞められないか」という二択ではなく、
「いつ辞めると、家計全体がどうなるのか」
という問題に変わります。
これは、かなり大きな違いです。
退職金の金額は、まず自分で調べてみる
では、退職金はいくらなのでしょうか。
ここが意外と難しいところです。
退職金制度は会社によって違います。
基本給をベースにする会社もあれば、ポイント制の会社もあります。
勤続年数や退職理由によって支給率が変わる場合もあります。
確定給付企業年金や確定拠出年金など、複数の制度が組み合わされていることもあります。
そのため、外から「大企業なら勤続○年で○万円」と決めつけることはできません。
ただ、退職金制度がある会社なら、まず確認してみたいのが社内の規程です。
就業規則や退職金規程などを読み込んでいくと、会社によっては、自分の勤続年数や条件から受取額をかなり具体的に計算できる場合があります。
規程は、決して読みやすいものではないかもしれません。
それでも、
「退職するまで金額は分からないもの」
と最初から諦める必要はありません。
まず、自分の会社ではどうなっているのかを確認してみる。
それだけでも、人生の資金計画に使える数字が一つ増えます。
教育資金と退職金を、同じ時間軸に置いてみる
教育資金だけを見ていると、
「これから何千万円も必要だ」
という印象になります。
退職金だけを見ていると、
「将来まとまったお金が入ってくる」
という印象になります。
でも、本当に見たいのは、その二つを同じ時間軸に置いたときの姿です。
教育費は、支払いが進めば残りが減っていく。
退職金は、制度によっては勤続に伴って受取額が増えていく。
さらに、その間には給与からの貯蓄もあります。
つまり、
「教育資金が必要だから、会社を辞められない」
という一見もっともな考え方も、もう少し分解して考えることができます。
今辞めたらどうなるのか。
数年後ならどうなるのか。
教育費の山を越えた後ならどうなるのか。
退職金はそれぞれの時点でいくらになるのか。
「辞められない」の前に、数字を並べてみる
会社を辞めるかどうかは、もちろんお金だけで決めることではありません。
仕事そのもの、家族の希望、健康、これからの暮らし方。
いろいろなことを考える必要があります。
ただ、お金の問題について言えば、
「教育資金が必要だから、まだ辞められない」
と考える前に、一度数字を並べてみてもいいと思います。
教育資金は、時間とともに必要な残額が変わります。
退職金も、退職する時期によって受取額が変わります。
その二つを同じ表に並べてみるだけでも、今までとは違う景色が見えてくるかもしれません。
教育資金という「大きな支出」だけを見るのではなく、
その支出が減っていくことと、退職金という将来の資金が増えていくことを、一緒に考えてみる。
そうすると、会社を辞めるかどうかだけではなく、
「これから、どんな働き方をしたいのか」
まで含めて考えられるようになります。
そんな資金計画も一度作ってみる価値があるのではないでしょうか。
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